26/10/2配信:食品の消費税が1%に。なのに「納税額が増える」のは飲食店です。
投稿日:2026年10月02日
朝4時起き名古屋の税理士、丸山です。
9月18日に、中部経済産業局から
私たち認定支援機関宛に一通の依頼が届きました。
「飲食料品の消費税率引き下げを、
顧問先に周知してほしい」というものです。
9月15日の臨時閣議で、
令和9年4月1日から2年間、
飲食料品の消費税率を【1%】とする大綱が
閣議決定されました。
「食品の税金が下がる。
飲食店にも追い風だ」
そう感じた方が多いのではないでしょうか。
結論から申し上げますと、
この理解は【逆】です。
同じ「食品」を扱っていても、
食品卸と飲食店では、影響がまったく違います。
そして飲食店は、何もしなければ
【納税額が増える】側に立たされます。
■ そもそも:消費税の納税額はどう決まるか
消費税の納税額は、
売上で預かった消費税から、
仕入や経費で支払った消費税を差し引いて
計算します。
①売上の消費税(預かった分)
②仕入・経費の消費税(支払った分)
③納税額 = ① − ②
今回の引き下げで変わるのは、
飲食料品の「売買」にかかる税率です。
ここで、業種によって
①と②のどちらが変わるかが分かれます。
■ 食品卸:①も②も下がる
食品卸は、売る側も買う側も飲食料品です。
売上の税率が8%→1%
仕入の税率も8%→1%
①も②も同じ方向に小さくなるので、
納税額そのものは大きく減ります。
ただし、ここで一つ落とし穴があります。
運送費、倉庫の家賃、包装資材、車両。
これらは飲食料品ではないので、
税率は【10%のまま】です。
売上で預かる消費税は1%なのに、
経費で払う消費税は10%。
つまり、②が①を上回り、
【消費税が還付される】会社が
出てくる可能性があります。
還付は本則課税(実額計算)でしか受けられません。
簡易課税を選択している卸業の方は、
このタイミングで見直しが必要です。
■ 飲食店:②だけ下がる
一方、飲食店はどうでしょうか。
大綱では、店内飲食は
軽減の対象外と報じられています。
つまり売上の税率は【10%のまま】です。
食材の仕入は飲食料品なので、
8%→1%に下がります。
①はそのまま、②だけ小さくなる。
数字で見てみましょう。
月商1,000万円(税抜)、
食材原価率35%の飲食店の場合です。
【現在】
①売上の消費税 100万円
②食材の消費税 28万円
③納税額 72万円
【令和9年4月以降】
①売上の消費税 100万円
②食材の消費税 3.5万円
③納税額 96.5万円
月に24.5万円、年間で約294万円、
納税額が増える計算です。
「税率が下がるのに納税額が増える」
これが飲食店の現実です。
■ ただし、損をしているわけではありません
ここで一つ、正確にお伝えしておきます。
飲食店は、食材の仕入で払う消費税も
同じだけ減っています。
月24.5万円、仕入の支払いが減り、
月24.5万円、納税額が増える。
【トータルの損得はゼロ】です。
では何が問題なのか。
問題は「順番」です。
仕入の支払いが減るのは、毎月です。
納税額が増えるのを実感するのは、
決算後の申告時です。
毎月、手元資金が24.5万円ずつ増えて見える。
その資金を「儲かった」と思って使ってしまう。
そして申告時に、増えた納税額が払えない。
このパターンを、私は何度も見てきました。
飲食店の「納税額が増える」問題は、
損得の問題ではなく、
【資金繰りの管理】の問題なのです。
■ 帝国データバンクの調査が示す「もう一つの差」
9月18日、帝国データバンクが
飲食料品の消費税率引き下げについて
約1万社に意識調査を行った結果を公表しました。
売上への影響の見込みは、
食品小売 +1.58%
飲食店 ▲3.94%
飲食店の46.9%が
売上の減少を予想しています。
理由は明確です。
スーパーやコンビニの食品は1%、
飲食店の店内飲食は10%。
「外で食べるより、
買って帰って家で食べる」
この価格差が、
外食から中食への流れを加速させる、
という懸念です。
飲食店は、納税額の増加と売上の減少、
二つの逆風を同時に受けることになります。
■ 今からできる備えは3つ
(1)来期の消費税額を試算する
現在の売上・原価率をもとに、
令和9年4月以降の納税額を
今のうちに計算しておきましょう。
「いくら増えるか」が分かれば、
毎月いくら積み立てるかも決まります。
(2)簡易課税の選択・取りやめを検討する
飲食店は、簡易課税の「みなし仕入率」が
60%のまま据え置かれる見込みです。
実際の仕入税額が激減する中で、
簡易課税が有利になる会社が増えます。
逆に食品卸は、還付を受けるために
本則課税が有利になる可能性があります。
届出は課税期間が始まる【前】までです。
決算期によっては、来年3月までに
判断が必要な会社もあります。
(3)中間申告の方法を確認する
食品卸の場合、中間申告は
前年の納税額を基準に計算されます。
前年は8%時代の納税額なので、
実態より過大な中間納付になる可能性があります。
「仮決算方式」を使えば、
実際の数字で中間申告ができます。
■ 制度はまだ「大綱」です
一つ、お伝えしておかなければなりません。
今回の内容は、9月15日に閣議決定された
「大綱」に基づいています。
実施には関連法案の成立が必要で、
店内飲食の扱い、切替日をまたぐ在庫の経過措置、
請求書の記載方法など、
細部はこれから固まります。
ただ、「細部が固まってから動く」では
間に合いません。
令和9年4月まで、あと半年です。
簡易課税の届出には期限があります。
価格改定にも、システム改修にも、
時間がかかります。
制度の詳細を待つのではなく、
「自社はどちら側に立つのか」を
今のうちに把握しておく。
それが、半年後に慌てないための
唯一の方法だと私は考えています。
食品を扱う会社を経営されている方は、
一度、来期の消費税額を
一緒に試算してみませんか。 大きな判断の前に、ぜひ一度ご相談ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


