26/8/21配信:銀行提案の再編スキームが否認?明暗を分けた「事業目的」の真実
投稿日:2026年08月21日
朝4時起き名古屋の税理士、丸山です。
お盆も過ぎましたが、まだまだ暑い日が続きますね。
毎朝のリサーチで、
注目すべき判決を見つけました。
組織再編や事業承継を
お考えの経営者様には、
ぜひ知っておいていただきたい
内容ですので、本日ご紹介します。
■ 子会社の赤字は親会社で使える
本題に入る前に、
前提を少しだけご説明します。
実は子会社、関係会社などを
吸収合併する場合、
一定の要件を満たせば、
子会社、関係会社に溜まっていた
繰越欠損金(税務上の赤字)を
親会社等が引き継ぎ、
親会社等の黒字と相殺できる
仕組みがあります(適格合併)。
赤字の子会社、関連会社を整理しながら、
グループ全体の税負担も抑えられる。
グループ経営では王道の手法です。
ただし、この仕組みには
「使い方」を誤ると
全額否認されるリスクがあります。
それを示したのが、今回の判決です。
■ メガバンク提案の再編が否認された
みずほ銀行が助言した、
子会社の繰越欠損金(約12億円)を
親会社へ引き継ぐ組織再編について、
大阪地裁が
「法人税法132条の2」を適用し、
税務署の処分を適法と認めました。
この132条の2とは、
形式的な要件が整っていても、
租税回避と認められる場合には
税務署が否認できるという、
組織再編税制の包括的な否認規定です。
「メガバンクの提案だから
税務署も認めるはずだ」
そう思われていた経営者の方も
少なくないのではないでしょうか。
この事案では、
会社分割で事業実態を
新設会社へ切り出し、
欠損金だけが残った
「殻」の会社を、
間を置かずに親会社へ
吸収合併させていました。
銀行の関与後に作られた社内資料は
節税効果の試算が中心で、
「税金を減らすためだけの
不自然な手順」と判断されたのです。
■ 一方、納税者が勝訴したPGM事件
他方で、同じように巨額の欠損金
(約57億円)を適格合併で引き継ぎながら、
裁判で納税者が勝訴した
「PGM事件」という先例があります。
東京地裁に続き、
令和7年7月の東京高裁でも
納税者勝訴が維持された、
重みのある判決です。
こちらの事案では、
横領事件に伴う簿外債務の遮断や、
融資契約(コベナンツ)の遵守、
10年以上続く子会社統合方針といった、
切実な経営課題・事業目的が
客観的証拠で立証されていました。
■ 明暗を分けた2つのポイント
この2つの事件、
外形は似ています。
何が明暗を分けたのでしょうか。
第一に、【事業目的が先行していたか】。
みずほ事案は、銀行の節税提案が先にあり、
それに合わせて再編手順が
組み立てられたと認定されました。
PGM事件は、債務リスクの遮断という
避けられない経営課題が先にあり、
税負担の少ない手法は
その解決手段の一つに過ぎませんでした。
第二に、【時間軸】です。
みずほ事案では、会社分割と合併が
一連のスキームとして
連続的に実行されました。
PGM事件では、分割から合併まで
約8年の期間があり、その間、
残された会社はリスク管理会社として
存続する実態がありました。
形式的な要件を満たしていても、
「税金を減らすこと」だけが目的の
不自然なスキームは通用しない。
逆に、正当な事業目的があれば、
税負担の少ない手法を選ぶこと自体は
納税者の正当な権利として守られる。
これが2つの判決が示した今の結論です。
■ 争いはまだ続く。しかし学びは「今」得られる
なお、みずほ事案の納税者側は
この判決を不服として、
控訴する意向を示しています。
PGM事件も地裁と高裁で
国側(税務署)の主張が二度退けられたように、
この論点はまだ司法の場で
議論が続いていく可能性があります。
つまり、二つの事件について最終的な結論は
まだ確定していないのです。
しかし、だからといって
「結論が出るまで様子見」で
よいわけではありません。
地裁・高裁レベルで既に、
「どういう再編が危なくて、
どういう再編なら守られるのか」
という判断の物差しは、
かなり具体的に示されています。
係争中の事例から
いち早く判断軸を読み取り、
自社の実務に先回りして活かす。
これこそが、事例から学ぶ
ということだと私は考えています。
■ では、どう資料を残すべきか
2つの事件から導かれる
実務の指針は明確です。
(1)事業目的を「再編の前に」記録する
なぜこの再編が必要なのか。
経営課題・リスク・財務戦略を、
税務検討より前の段階の
取締役会議事録や経営会議資料に
残しておくことです。
「節税の試算が先、理由は後付け」
という時系列になった瞬間、
みずほ事案と同じ土俵に乗ります。
(2)各ステップに独立した理由を持たせる
分割・譲渡・合併と
複数の手順を組み合わせる場合、
それぞれの段階に
「事業上の必然性」があるかを
一つずつ確認し、記録します。
(3)「税務メリットゼロでもやるか」と自問する
仮に税務上のメリットがゼロでも、
この手順を選択するか?
この問いに経営陣が
「イエス」と答えられ、
その理由が記録に残っていること。
意思決定の順番と記録こそが、
会社を守る最大の武器になります。
■ 大きな一手を打つ前に
当事務所では、組織再編・HD化・
事業承継のスキーム設計はもちろん、
「今検討している再編案が
税務リスクを抱えていないか」
「事業目的の記録は十分か」の
セカンドオピニオンも承っております。
ぜひ一度ご相談ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


