26/8/14配信:フェラーリの経費が否認された最新裁決に学ぶ。税務調査で調査官が引き下がる「事前エビデンス」の極意
投稿日:2026年08月14日
朝4時起き名古屋の税理士、丸山です。
「丸山先生、高級車やスポーツカーって
会社の経費で落ちますか?」
経営者の方から、
このようなご質問をいただくことが
よくあります。
「セダンじゃないとダメ」
「高級車は一律でアウト」
そんな噂を聞いたことが
あるかもしれません。
■ 車種は関係ない。基準はただ一つ
結論から申し上げますと、
どんな車種であろうと
【業務に使用しているか】
ただそれだけが判断基準です。
仮に、高級車やスポーツカーであっても
本当に業務に使っていれば、
経費にできる可能性は十分あります。
重要なのは、車種ではなく
「業務で使用している事実」を
どう証明(立証)するかです。
そのことを痛感させられる
最新の裁決事例が公表されましたので、
本日はご紹介します。
■ フェラーリとポルシェが否認された最新裁決
不動産貸付業を営む会社役員の方が、
フェラーリとポルシェの減価償却費等を
不動産所得の必要経費として申告したところ、
税務署に否認され、争いになった事案です
(国税不服審判所・令和7年1月20日裁決)。
この方の主張は、こうでした。
「不動産投資では市況や開発情報の
情報収集が重要で、その活動に車が必要」
「タワーマンション最上階のような
優良物件を優先的に回してもらうには、
開発業者に自分の資金規模を
理解させる必要があり、
高級車はそのために必要不可欠」
「個人用の高級車は別に複数台
持っているから、この2台を
個人利用する必要はまったくない」
不動産投資の実務を知る方なら、
「言いたいことは分かる」と
感じる主張かもしれません。
しかし、審判所の結論は「否認」でした。
■ 立証責任は「増やす側」と「減らす側」で違う
なぜ負けたのか。
その前提として、税務の世界の
立証責任のルールを整理します。
税金を【増やす】方向の事実、
たとえば売上の計上漏れなどは、
税務署側が証明する責任を負います。
一方で、税金を【減らす】方向の事実、
つまり必要経費や各種特例については、
その内容を一番よく知っているのは
納税者自身です。
そのため実務では、
「本当に経費です」と証明する役割は
納税者側が負うと考えられています。
「経費として認めてほしければ、
証拠を出すのはあなたの側ですよ」
ということです。
■ 敗因は「主張」だけで「証拠」がなかったこと
今回の裁決でも、
この構造がはっきり表れました。
まず税務署は、帳簿や申告内容から
「不動産賃貸業として
通常かかる経費の範囲」を示しました。
ここまでが税務署の仕事です。
すると、その範囲から外れている
フェラーリやポルシェの経費は、
「必要経費ではないだろう」と
ひとまず推定されてしまいます。
この推定をひっくり返すには、
納税者の側が
「本当に事業に使っている」ことを
具体的な証拠で示すしかありません。
しかし本件では、審判所の調査でも、
車両の【使用方法】【使用頻度】【使用目的】を
裏付ける証拠が、何もなかった。
どれだけ主張が立派でも、
証拠がなければ推定は覆らない。
これが敗因のすべてです。
逆に言えば、日頃から
運行管理簿や社用車使用規定などの
客観的な根拠を備えている会社と、
何もない会社とでは、
調査の展開がまったく変わってくるのです。
■ エビデンスは「日々」作るもの
ここで、多くの方が
勘違いしてしまうポイントがあります。
「税務調査で突っ込まれたら、
その時に言い訳や証拠を考えよう」
という考え方です。
しかし、先ほどの裁決が示すとおり、
後から主張だけを組み立てても、
使用の実態を示す記録がなければ
勝てません。
運行管理簿などは、
調査の言い訳のためではなく、
会社の日々の資産管理のために
「日々」作成するものです。
申告を行う【時点】で、
正しい法律関係と客観的な根拠を
構築しておかなければなりません。
■ では、何があれば勝てたのか?
逆に考えてみましょう。
この納税者に、次の3つの
客観的エビデンスがあったなら、
結論は変わっていた可能性が高いのです。
(1)日々の運行管理簿
「○月○日、〇〇開発の担当者と面談
(走行距離〇km)」といったように、
利用実績を業務内容と紐づけて
記録した帳簿です。
これがあるだけで、
「情報収集に使っている」という
抽象的な主張が、
「客観的な事実」に昇格します。
(2)取引相手の証言
「高級車で来社された資金力を評価し、
一般公開前の物件をご案内した」
そんな不動産会社側の
メールや打ち合わせ記録があれば、
「営業ツールとして必要不可欠」の
強力な裏付けになります。
(3)活動の成果物
視察した物件の写真、
現地で集めたパンフレット、
それを基に作った投資検討資料。
日付入りで残っていれば、
車が実際に稼働していた
動かぬ証拠になります。
つまり、勝敗を分けるのは
弁の立つ主張ではなく、
日付の入った「記録」なのです。
■ 休日利用がある場合の備え
なお、主目的は業務であっても、
休日に個人で使用することがある場合は、
あらかじめ「社用車使用規定」を定め、
適正な使用料を支払う仕組みを
作っておくのが確実です。
■ 申告時点で100%説明できる状態をつくる
「税務調査が入ってから慌てる」のではなく、
「申告時点で100%説明できる状態をつくる」こと。
これこそが、大切な会社と資産を守る
最も確実な方法です。
ご自身の社用車や取引の扱いについて
気になる点がございましたら、
いつでもお気軽にご相談ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


