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【役員社宅】賃貸料相当額を家賃の半分以下にする方法

投稿日:2022年10月12日

社宅というと、従業員が入居するイメージがありますが、役員であっても社宅を利用でき、さらに会社で節税が可能になります。

ただし、役員が社宅を利用する場合には、会社が賃貸料相当額を徴収しないと給与課税されてしまいます。よく賃料の半分を徴収すれば課税されないと言われていますが、しっかりと計算をすると半分以下の金額の徴収でも可能です。

このブログでは、主に給与課税されないための賃貸料相当額の計算方法についてご紹介します。また、役員が社宅を利用して節税できる理由や注意点を合わせてご説明しますので、導入をする際の参考にしてください。

1.役員が社宅を利用するメリット等

役員が社宅を利用すると得られるメリットをご紹介します。主に税務面で節税になるだけでなく、役員本人のメリットがあります。

社宅に関する費用を経費にできる

社宅にする物件は、自己所有物件だけでなく、賃貸用物件も可能です。

賃貸用物件の場合は、会社が契約をし、役員が居住することになります。家賃や仲介手数料などの費用を法人の経費にでき、法人の節税につながります。

自己所有物件の場合には、減価償却費や固定資産税などの維持費用を法人の経費とでき、こちらも法人の節税につながります。

自己所有物件の場合のデメリットとしては、住宅ローンのような35年等の長期返済ができない、団信保険が使えない等があります。

役員の給与を減額すれば社会保険料を軽減できる

もし役員が社宅に入る場合は、個人で住居費用を支払う金額が少なくなります。

この分、役員報酬を減額すれば、役員報酬にかかっている社会保険料も減額できるので、個人の社会保険料の負担を減らせます。

社会保険料の半分は会社負担なので、こちらも減額でき、損金は減りますが支出を減らすことが可能です。

役員の給与を減らさなければ、手取りを増やせる

個人で居住費用を支払う金額が少なくなるため、もし役員報酬を減らさなければ、手取りを増やすことができます。

2.社宅家賃を給与課税されないための注意点

ただし、役員が社宅を利用する場合には注意点があります。役員本人から、1ヵ月当たり一定の家賃(「賃貸料相当額」といいます)を受け取らないと一月あたりの支払う家賃相当額や一定の計算式で計算した「賃貸料相当額」分が給与課税されてしまいます。

もしいくらか受け取っていた場合でも「賃貸料相当額」に満たなければ、その差額が給与課税されます。

役員の場合、給与課税されると、源泉所得税の対象となるだけでなく、期の途中などで、もし定期同額給与に当てはまらないケースになってしまうと、役員賞与として損金算入されない可能性も出てきます。

賃貸料相当額は役員から徴収し、法人の益金で計上します。このため、法人が社宅の家賃として損金にできる金額は、実質的には「家賃から役員が負担する賃貸料相当額分を差し引いた部分」になります。自己所有物件の場合も同様に徴収する必要があります。

賃貸料相当額をできるだけ少なくできれば、法人の経費も増やせますし、役員本人の負担も減らせます。賃貸料相当額の計算方法について、以下でみていきましょう。

もちろん、このコロナの状況で社宅といえども、会社のために家賃を多めに負担したい場合や、会社に少しでも多くお金を戻したい場合には、社宅家賃の金額を少額にして、その分役員から資金を会社に貸付けることもできます。

そうすれば、会社の業績が良くなった時に、貸付金の回収としてお金の返済を受けることもできますので、社宅家賃の金額は少額にしておいた方が良いかもしれませんね。

3.賃貸料相当額の計算方法

賃貸料相当額の計算は、小規模な住宅である場合と、小規模な住宅ではない場合、そして豪華社宅の場合で異なります。

豪華社宅にあたるかどうかは、床面積などさまざまな要素を総合的に判断して決めますが、役員の社宅として導入する場合、多くの会社では小規模な社宅であるケースが多いです。

木造等の場合には社宅の部屋の面積が132㎡以下(約40坪)、木造以外のその建物の耐用年数が長いものについては99㎡以下(30坪)場合には、小規模な社宅に該当します。

なお、この面積の判断については、マンションなどの区分所有の場合には、共有部分の面積を、専有部分の面積で按分した後の、専有部分と共有部分の合計となりますので、間違えないように注意が必要です。

事前に賃貸の仲介をしていただける不動産会社の方に依頼して、床面積などは確認すると良いと思います。

No.2600 役員に社宅などを貸したとき(国税庁)

小規模な住宅の場合

賃貸料相当額は、次の(1)~(3)の合計額になります。

  • (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
  • 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル))
  • (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

小規模な住宅ではない場合

自己所有の場合と、賃貸住宅では計算方法が異なります。

(1)自社所有の社宅の場合

次のイとロの合計額の12分の1が賃貸料相当額になります。

イ (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%*

*法定耐用年数が30年を超える建物の場合には10%

ロ (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%

(2)賃貸住宅の場合

家賃の50%の金額と、上記(1)で算出した金額のいずれか多い方が賃貸料相当額になります。

こちらの固定資産税の課税標準となる金額については3年毎に見直しが行われるため、家賃相当額も定期的な見直しが必要なります。

4.固定資産税の課税標準額を知る方法

賃貸料相当額は、豪華社宅になる場合を除けば、小規模な社宅でない場合の判断基準の一つである「家賃の50%」を徴収しておけば、すべてのケースでまず給与課税されることはありません。

このため、詳細な計算をせずに、家賃の50%以上を徴収するケースが多くあります。しかし、実際、計算をすれば、金額はかなり低く抑えられることがほとんどです。

実際に賃貸料相当額を計算するには、上記の計算式にあるように、建物の固定資産税の課税標準額とその敷地の固定資産税の課税標準額を知る必要があります。

しかし、賃貸住宅の場合は賃借人が固定資産税を支払っていないので、何もしなければ知ることはできません。

ですが、賃借人の立場であっても、市役所へ行けば固定資産課税台帳の閲覧が可能です。賃貸人の許可は必要ありません。賃貸借契約書、本人確認書類を持参して申請してみましょう。

自治体により申請方法は異なりますので、事前に確認するとよいでしょう。多少手間をかけても、固定資産税の課税標準額の金額を入手して計算をしてみることがおすすめです。

また「固定資産税の課税標準額」は「固定資産税課税標準額」と「固定資産税評価額」のどちらをさすのか迷うところですが、特例による減額前の固定資産税評価額となります。

5.役員用社宅を導入する場合の注意点

役員用の社宅を導入する際の注意点をまとめました。

会社名義で契約する

社宅が賃貸物件である場合、家賃を法人の損金とするには会社名義で契約しましょう。自己所有物件の場合も同様に、会社名義で物件を購入しましょう。

家賃以外の水道光熱費は個人負担

光熱費など、個人で使用する部分は個人負担です。会社が負担した場合は、給与として課税されてしまうため、注意しましょう。

家賃以外の初期内装費用及び家具費用の取扱い

家賃以外で家具代金、社宅の内装費用などが掛かった場合は「その家具代金、内装費用などを資産計上した金額を、耐用年数に応じて定額法により償却した金額」と同額以上の備品の使用料を家賃とは別に徴収すれば、給料として課税しない、という質疑応答事例があります。しかし、個人的には個人負担の方が良いと思っております。

マンションの管理費などがある場合

家主に支払う家賃の中に、エレベータの管理費、火災報知器保守料、共用部分の電気料金、火災保険料などがある場合には、通常の家賃と同様に取り扱います。

そのため、社宅家賃として計算した結果、10万円のうち役員の負担が2万円であった場合には、もしエレベーターの管理料、火災報知器などの保守料等が30,000円の場合、6,000円(30,000円×20,000円÷100,000円)が個人負担となり、24,000円は会社負担ということになります。

役員に貸与したマンションの管理費(国税庁)

礼金、仲介手数料等

会社が社宅を借りるための資金として、会社負担でも問題はありません。

6.まとめ

以上、役員が社宅を利用する場合に、給与課税されないための賃貸料相当額の計算方法について、主にご紹介しました。

給与課税されないための「賃貸料相当額」の扱いが、役員と従業員では異なります。役員の場合は従業員よりも多く徴収しなければならないため、実務上では50%以上を負担してもらうケースが多くあります。

しかし、少しでも役員からの徴収金額を少なくして法人の節税を図るためには、一度、固定資産税の課税標準額を入手して計算し、50%の金額と比較してみることをおすすめします。
ビックリするぐらい金額の差が出てきます。

この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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