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木造築古物件を用いた不動産投資における節税方法や注意点を詳しく解説

投稿日:2022年12月28日

近年、資産家向けに販売される、木造の築古物件が増えています

この方法は不動産の節税を目的として効果がある方法として注目されています。

 

木造の築古物件で節税する方法や注意点について詳しく解説していきます。

 

古い土地付き建物を使った節税方法

古い土地付き建物を使った節税方法は、次の流れで行います。

  1. 業者は建物の築年数が古い木造物件を購入する。
  2. 購入した業者は建物についてリフォームを行い建物の価値を上げる。
  3. 資産家へ売却するときに売買契約書に建物金額を多めに記載して売却する
  4. 資産家の購入者が売買契約書記載の金額を基準に減価償却する
  5. 所有期間5年を経過したところで売却する

少し複雑な節税方法ですので、それぞれの流れを詳しく理解しておきましょう。

1.不動産業若しくリフォーム業者が建物の建築年数が古い木造賃貸アパートを購入する。

ここで登場するのが、不動産の仲介業を行っている方やリフォームをして販売する業者ですが、築古の木造アパートなどを購入します。

2.購入した業者は建物の築年が古いため建物のリフォームを行います。

通常、築年数が古い建物は法人税や所得税で使う減価償却費の計算上、建物の価額とすべき金額が低くなりますが、その古い建物にリフォームを行い建物価値を増加させます。

3.資産家へ売却するときの売買契約書に建物金額を多めに記載して売却する

建物と土地の内訳を記載した売買契約書を作成して売主と売買契約を締結します。

例えば、建物と土地を総額1億円で売却するのであれば、実際の土地と建物への按分を固定資産税評価額より按分する方法よりも、建物の価格を高く記載して、土地の価格を引き下げます。

実際に築古の建物はリフォームされており、建物価値を高く表記しても理屈はとおります。

具体的な計算では、固定資産税評価額を基準に按分した場合に建物2,000万円、土地8,000万円になる物件でも、建物5,000万円、土地5,000万円のように建物の価格を高く、土地の価格を低く記載して売買契約書を締結します。

建物をリフォームして販売をする業者の方は、あえて、この築古の物件をリフォームなどして販売することを目的としているため、建物の価額を一般的な按分方法よりも高めに按分をしてくると思います。

現行法で、この手続きが駄目だと言える規定はありません。

しかしあまりにも建物の価格を大きくしすぎると、その土地と建物への取得価額の按分方法について問題視される可能性はあります。

4.購入者が売買契約書記載の金額を基準に減価償却する

資産家が物件を購入すると、物件の購入者は売買契約書記載の金額を基準に減価償却します。

つまり、固定資産税評価額を基準にしたら2,000万円の価値の建物でも、売買契約書記載の5,000万円を基準として減価償却をすることができるのです。

20%で減価償却した場合、建物価格2,000万円の場合は400万円の減価償却費ですが、建物価格5,000万円であれば1,000万円も減価償却費を費用計上することが可能です。

減価償却の際には建物の評価額は契約書記載の金額を基準とすることは法的に問題ありません。

そのため、契約書記載の建物価格を高い金額を購入する方が、多額の減価償却費を計上することができます。

また、中古建物は減価償却を短期間で実施できるのもメリットです。

法定耐用年数を経過した建物は「法定耐用年数の20パーセントに相当する年数」で減価償却すると定められています。

木造建物の法定耐用年数は22年ですので、築22年を経過している中古の建物はその20%である4年(1年未満切り捨て)で減価償却できます。

つまり、短期間で多くの減価償却費を計上できるのです。

5.所有期間5年超を経過したところで売却する

この不動産の所有期間が5年経過した日以降のところで売却を検討する必要があります。

不動産を譲渡した場合において、その不動産の売却した年の1月1日において、所有期間が5年を超えるものは長期譲渡所得となり、譲渡所得税等は20.315%%となります。

所有期間5年未満の不動産を譲渡した場合の譲渡所得については短期譲渡所得となり、所得税等の税率は39.63%です。

5年超所有してから譲渡した方が税率が圧倒的に低くなるので、5年超は所有してから売却を検討しましょう。

 

古い土地付き建物を使って節税する際の注意点

土地付き建物を使って節税する際には次の5点に注意しましょう。

  1. 建物の価額は適正なのか
  2. 建物の耐用年数は適正なのか
  3. 売却時の利益が大きくなる
  4. 償却期間が短いため長期の節税効果はない
  5. 出口戦略も慎重に考える

 

1.建物の価額は適正なのか

今回のスキームでは、業者が購入した築古物件を業者がリフォームして販売をするため特に問題がないようい思われますが、実際に建物と土地への按分比率が著しく、時価とかけ離れすぎると、こちらについては税務調査時に問題になる可能性はあります。

 

近年、令和4年の4月にも最高裁判決に出たように、土地建物の時価について正式な時価を述べることができるのは不動産鑑定士のみとなり、税務署側が不動産鑑定評価を取得して土地と建物の価額を按分した場合の金額と著しくことなる場合には、注意が必要です。

また、その他にも固定資産税評価額をもとに価格を按分するものという意見もあるためです。

契約書記載の建物価格を高くするという方法は違法ではありませんが、100%安全な方法とは言えないという点もしっかりと認識しておきましょう。

 

2.建物の耐用年数は適正なのか

今回のスキームでは、資産家の方が購入した不動産について、建物の耐用年数が中古資産の耐用年数いわゆる簡便法による耐用年数により、短い期間で多額の減価償却費を計算できるところにポイントがあります。

近年改正になった、国外不動産における減価償却費と同様に、建物の耐用年数を残存利用可能期間で見積もる方法、若しくは、中古耐用年数で減価償却費を計算することについての改正が入った場合には、この方法は使えなくなります。

 

3.売却時の利益が大きくなる

この方法を用いて節税を行った不動産を売却する際には、売却する際の利益が非常に大きくなるという点にも注意しなければなりません。

固定資産税評価額を基準に按分した場合、建物2,000万円、土地8,000万円の不動産を、土地と建物5,000万円ずつとして貸借対照表に計上し、建物の減価償却を終えたタイミングで売却するケースを考えてみましょう。

この場合、貸借対照表上の簿価は建物価格0円、土地の価格は5,000万円です。

しかし実際には土地には8,000万円の価値があるため売却価格も8,000万円程度になることが想定されます。

つまり「帳簿上5,000万円の土地を、8,000万円で売却した」ということになるので、実に3,000万円もの利益が出ることになります。

これまでの減価償却による節税効果が全て吹っ飛んでしまほど大きな利益です。

売却する時は、「本業で大きな赤字が出たとき」などタイミングをしっかり見極めないと節税効果がなくなってしまうという点に注意しましょう。

 

4.償却期間が短いため長期の節税効果はない

中古物件を活用したこの節税方法は、築年数が経過した古い建物を使用します。

法定耐用年数が経過した建物は以下のように減価償却することが通達によって決められています。

法定耐用年数の全部が経過したもの「法定耐用年数×20%」

No.5404 中古資産の耐用年数|国税庁 (nta.go.jp)

法定耐用年数のたった20%の期間した償却年数がないので、長期間の節税効果を得ることは不可能です。

例えば木造住宅の法定耐用年数は22年ですので、築22年超の物件の場合には4年で減価償却を行わなければなりません。

節税効果があるのは数年だけで、長期間の節税効果を得ることは不可能だと理解しておきましょう。

 

5.出口戦略も慎重に考える

古い土地付き建物(リフォーム済み)の物件を使って節税をする場合は、出口戦略も考えてから投資をすべきです。

節税効果だけを見て不動産投資を行ってしまうと、今回のケースでは5年超が経過した時以降に売却できなければ、なんの意味もありません、むしろ損失となってしまいます。

 

本当に5年経過後以降に売却できる物件か、また土地の価格が下がるリスクはないか、建物に価値をつけて売却できるのか、という点を慎重に検討した上で投資を行いましょう。

まとめ

不動産にかかる税務は、事前に知識があるか、ないかで大きく税金が異なります。

不動産に関する税金については、丸山会計事務所までご相談ください。

この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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