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固定資産の除却処理で法人税と償却資産税を節税する方法

投稿日:2022年08月31日

不要な固定資産を除却処理すると、節税につながります。なぜなら、除却した際に計上する「固定資産除却損」が損金になりますし、もし除却資産が償却資産税の対象であったならば、それも減額できるからです。

固定資産を除却するには、実際に廃棄するだけでなく、廃棄はしていなくても一定の要件を満たせば除却損を損金計上できる「有姿除却」という方法もあります。このコラムでは「有姿除却」の概要とポイント、そして除却処理で節税をする際のポイントをご紹介します。

1.除却処理でなぜ節税になるのか

不要な固定資産は、売却するか廃棄をするといった選択肢があります。うまく売却できればよいですが、できない場合もあるでしょう。その場合、除却処理をすれば、節税になります。なぜ節税になるのかを最初にご説明します。

固定資産除却損を損金計上できる

固定資産を除却処理すると、その時点での固定資産の帳簿価額を固定資産除却損として損金計上できます。ただし、固定資産を実際に廃棄するか、有姿除却の要件を満たす場合のみに処理が可能です。

もし簿価が1円の固定資産であれば、除却損は1円なので、大きな節税にはなりません。ですが、大規模な設備などで未償却部分の簿価の金額が高い固定資産が廃棄、もしくは有姿除却の対象になる場合には、除却損の金額は大きくなり、節税効果も高くなります。

新しい資産を購入したことにより、古い設備、機械などを破棄した場合、修繕を行ったが資本的支出となり資産計上された場合なども、以前の資産を除却処理できる場合があります。

会計事務所側でも、既に使わなくなったものがあるかどうかは、お客様とのコミュニケーションが無いと気が付かない場合が多く、固定資産台帳に資産が残っている場合があります。

償却資産税を節税できる

除却処理をすれば、償却資産税の節税にもなります。

償却資産税は、市区町村が事業で使っている固定資産に対して課税しています。対象は構築物、建物附属設備、機械装置、器具備品などです。土地や建物は固定資産税が課せられますので、対象外です。

償却資産税の対象となる固定資産を廃棄しているにも関わらず、除却処理をしていなければ、課税されてしまいます。しっかり除却処理することで、課税標準額✕1.4%(市区町村によってはまれに率が異なります)の金額が節税できます。

償却資産税については、減価償却をしきった古い資産で、たとえ帳簿価額が1円となっていても、取得価額の5%が課税対象として残り続けます。 そのため除却処理を行わないと、永久に税金を支払い続けることことになります。

償却資産の評価額及び税額の計算について(藤沢市)

例えば50,000,000円の機械を購入し、減価償却が既に終わっていても、除却処理を行わなければ、毎年35,000円の償却資産税がかかり続けることとなります。

2.有姿除却の概要とポイント

除却損を損金計上するには、実際に廃棄するか、有姿除却をおこなう必要があります。有姿除却の要件とポイントをご紹介します。

有姿除却の概要

有姿除却は、固定資産を実際に廃棄していなくても、以下の要件を満たす場合には廃棄したと同様の除却損を損金に計上できるものです。

  • その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産
  • 特定の製品の生産のために専用されていた金型等で、当該製品の生産を中止したことにより将来使用される可能性のほとんどないことがその後の状況等からみて明らかなもの

(法人税法基本通達7-7-2より抜粋)

実際に廃棄していないので、除却損に計上できる金額は、処分見込価額を見積もり、帳簿価額からそれを控除した金額になります。

有姿除却の事例

事例としては、以下のようなケースがあります。

  • 工場を移転し、旧工場はまったく稼働していないが、撤廃するには多額の費用がかかるため、差し当たりそのままの状態になっている場合
  • 生産中止となった製品の金型があり、もう使用しないことは明らかだが、念のため当分保有することとしている場合

有姿除却のポイント

有姿除却は、実際に廃棄していなくても損金にできることから、要件を満たしていることを主張できないと、税務調査で指摘される可能性があります。もうすでに使用していない、将来使用する可能性がほとんどない、という状況を明らかにしておきましょう。具体的には、以下のようなことが考えられます。

  • 設備の場合は「旧設備はもう稼働しない」という経緯がわかる経営計画書、取締役会議事録や稟議書などの所内での意思決定文書を残しておく
  • 旧設備に関連する人員は、配置転換していることを明らかにしておく
  • 生産中止となった金型であれば、生産中止となったことがわかる製品パンフレットや、経営計画書、取締役会議事録や稟議書などを残しておく
  • 旧製品の金型が他製品に転用できない状況を、所内で文書化しておく
  • コンセントなどの電源を切断して、客観的に使えないことを明らかにしておく

3.除却処理で節税をする際のポイント

有姿除却であっても、実際の除却であっても、会計上で除却処理をしなければ除却損が計上されないため節税にはなりません。除却処理で節税をする際のポイントをご紹介します。

決算前に固定資産台帳を確認する

その期に節税するためには「決算日前」に固定資産台帳を確認し、廃棄したものがないか、廃棄はできないが、もう使えず使う予定がないので、有姿除却ができるものがないかをチェックしましょう。

また、取得価額が30万円未満のため、少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例を適用して、全額を損金に計上した資産については、償却資産税の対象となります。これらの資産も、廃棄したものがないか合わせて確認しましょう。

固定資産台帳の確認は節税のためだけでなく、実際に現物があるかどうか、盗難などにあっていないかといった管理上の観点からも有効です。

廃棄するなら決算日前におこなう

もし固定資産を実際に廃棄する場合は「決算日前」におこないましょう。有姿除却でなければ、実際に廃棄をおこなった日が損金に計上できる日になるからです。

そして廃棄を証明する書類を残すことが大切です。証明する書類は、例えば産廃業者に引き渡しをした書類などですが、もし業者に頼まなかった場合には廃棄時の写真など、廃棄の事実がわかるものを残しておきましょう。

実際に廃棄をおこなった日が損金に計上できる日であることから、書類に「廃棄をした日付」を残すことも重要です。

4.まとめ

除却処理は、固定資産の管理、法人税・所得税の節税、償却資産税の節税の観点から有効です。資産の除却については、会計事務所側でも気が付かない場合が多く、実際に存在しない資産が固定資産台帳に資産が残っている場合がありますので、確認してみましょう。

また、有姿除却は、実際に廃棄をしなくても除却損を損金計上でき、節税になります。事情があって廃棄ができないけれども、今後使うことはまずないと思われる固定資産がある場合には検討してみましょう。ただし、有姿除却の要件は具体的ではなく、判断がともなうところです。しっかり対策をしないと認められない可能性がありますので、事前に税理士に相談することをおすすめします。

この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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